ぞ御勘弁をお願ひ申します。」
 おぢいさんは恐れ入つて頭を下げました。
「その褒美に皇子様からお金を一包下さる。誠に大儀であつた。」
「ヘヽヽイ。」と、おぢいさんは喜びました。すると今度は大納言は詞《ことば》を改めました。
「だがその冠ぢや、それは一体|誰《だれ》から授けられたものか聞いてまゐれとの仰せぢや。」
「ヘヽヽイ。」と、おぢいさん今度は恐しくて縮み上りました。「是《これ》は御所の御庭で拾ひましたものでございます。どうぞ御勘弁を……。」
「ウン、さうか、ではお前に授けられたものではないから、お前のものとしてかぶつてならないものぢや。一体ならば、そんなものをかぶり、大納言のまねをして、山車をとめさしたりなどしたのだから、重い罰を言ひつけるのだが、皇子さまをお助け申したことがあるから、今度だけは赦《ゆる》してあげる。冠はこちらへ渡せ。」
 おぢいさんは大納言の冠をとられて、お金を一包みいたゞいて宮城を出ました。すると丁度そこへ祇園の山車が一つ帰つて行くところにであひました。大納言の冠がもうありませんから、今度は山車は駐らないばかりでなく、それについてゐる若い者のうちに、おぢいさんを
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