うだいな。そんな、いぢわるをしないで……」
さう言つてゐるやうに聞えます。
「やるよ、やるよ。さア/\。」
幸坊は、かはいさうになつて、餌をまいてやると、そこへ、いきなり、まつ黒な猫《ねこ》が一ぴきとび出してきます。ほかの鶏はびつくりして、クワツ/\と叫んでにげますけれど、をんどりだけはなか/\勇気があつて、ちよつと首をあげて、グウとのど[#「のど」に傍点]をならして、猫をにらみます。猫は面白がつて、飛びつきさうにしますと、をんどりは頭を下げ、首の毛をさかだてゝ、猫がそばに来たら、目をつゝいてやらうと、まちかまへてゐます。
「黒や、もうおよしよ。とうと[#「とうと」に傍点]がきらふからね。」
幸坊はさう言つて、黒をだきあげて、そのつめたい鼻の先をじぶんの頬《ほ》つぺたにぴつたりとつけ、ビロードのやうなその背をなでてやります。黒は甘えて、のどをゴロ/\音させながら、するどい爪《つめ》で、しつかり幸坊の着物にすがりついてゐるのです。
二
或日《あるひ》、幸坊《かうばう》が学校の当番で、おそくうちへかへりました。すると、お母さんが、困つた顔をしてかう言ひました。
「幸や
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