幸坊の猫と鶏
宮原晃一郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)幸坊《かうばう》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)とさか[#「とさか」に傍点]は

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)わか/\しく
−−

    一

 幸坊《かうばう》のうちは、ゐなかの百姓でしたから、鶏を飼つてゐました。そのうちに、をんどりはもう六年もゐるので、鶏としては、たいへんおぢいさんのはずですが、どういふものか、この鳥にかぎつて、わか/\しくしてゐました。まつ白な羽はいつも生えたてのやうに、つや/\して、とさか[#「とさか」に傍点]は赤いカンナの花のやうにまつ赤で、くちばしや足は、バタのやうに黄いろでした。
 幸坊が餌《ゑ》をもつていくと、このをんどりがまつ先きにかけて来ます。幸坊がわざと、ぢらして餌をやらないと、をんどりは片足をあげながら、首をかしげて、ふしぎさうに餌箱を見上げますが、幸坊が笑ひながら、やつぱり餌をくれないでゐると、とう/\たまらなくなつてクウ/\と小さな声で鳴きます。
「幸ちやん、幸ちやん。ちや
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