。それと一緒に王様のお顔には、日がさしてくるやうに血の気が紅々《あかあか》とさして来ます。
「チックヮラケー/\。」
 勢のよい、しかも美しい鶉の声にとう/\疱瘡の神は烈《はげ》しい風に吹きとばされる雲のやうに追ひのけられ、王様の御気色《みけしき》はうららかに晴れた蒼空《あをぞら》のやうに美しくなりました。


    三

 するとまたしばらくお城に子の鶉《うづら》が見えません。王様は、どうしたのだらうか、ひよつとしたら鳥さしにでも捕まつてしまつたのだらうか、さうと思ひ付いたら、早く国中におふれを出して鶉を一さい捕ることはならんと人民に言ひつけて置く筈《はず》だつた、もう今からでは遅いだらう、困つたことをしたわい、と心配しておいでなさいました。
 大臣は王様の御心配を見て、もしやそのために又病気にでも、おかゝりになつては大変だと思つて、人を鶉のゐる野原へ遣はして、捜さしましたけれど、ちつとも行衛《ゆくゑ》が分りませんで弱つてをりますところへ、或日《あるひ》鶉がひよつこりとお庭の樹《き》に飛んでまゐりました。そしてお縁先まで近寄りまして、
「チックヮラケー。」と謡《うた》ひました。けれ
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