やないか? だから私はお前を嘘つきといふのだ。」
「あゝさうだつたか?」と、子の鶉は面目なさゝうに頭を下げました。
「まつたく、そんなことは少しも知らなかつた。みそさゞい君、私《わたし》が悪かつた。どうぞ、ゆるしてくれたまへ。私はこれから、王様のお城へ行つて、その疱瘡の神をみごと追ひ払つて、王様のお寿命を、のばすやうにするから……。」
子の鶉はさういふが早いか、すぐ、まつしぐらにお城へ飛んで丁度王様がねておいでなさる御座敷のお庭の木にとまりました。
なるほど、菊石面《あばたづら》の赤いきたない疱瘡の神が、まるで大きな章魚《たこ》のやうに王様のお体に、ぴつたりと吸ひ付いてをります。それを見ると、子の鶉は、おのれ太い奴《やつ》と、すつかり怒つて、いきなり、大きな声で、
「チックヮラケー/\。」と鳴きました。
「おや鶉が来た。あの鶉が来た。」
王様は重いお頭《つむ》を枕《まくら》の上にもたげ、疱瘡の神は醜い顔を王様のお体から離してこの歌をきゝました。
「チックヮラケー/\。」
鶉の声がます/\冴《さ》えると疱瘡の神は汐《しほ》が退《ひ》いて行くやうに、王様からぢり/\と退いて行きます
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