、もしわけを言へなかつたら、貴様の片羽へし折つて、鼠《ねずみ》の餌食《ゑじき》にしてくれるから。」
みそさゞいは嘲笑《あざわら》ひました。
「わけを言へないで、どうするものか? お前は王様に何とお約束申し上げたのだ?」
「ウーン、それは……。」
子の鶉は二の句がつげません。みそさゞいは、それ見ろといふやうな顔をして……。
「フン、それで嘘つきでないといふのか? お前は王様がこの間から、重い疱瘡《はうさう》にかゝつていらつしやるのを知らないか? あの菊石面《あばたづら》の赤い疱瘡神は、王様のお体に、その一万もある針を、すつかりさしこんで、毒を入れてゐる。もう王様のお命は、いつなくなるか知れないのだ。そこでお側《そば》にゐるものが、賢い学者に聞いてみると、鶉の声をお聞きになれば、疱瘡の神が驚いて遁《に》げるといふことで、いろ/\の鶉を集めて、鳴かせるが、疱瘡の神はびくともしないのだ。王様は――私《わたし》が放してやつたあの鶉の威勢のいゝ声を聞けば、きつと私の病はなほるとおつしやる。それだのにお前は自分のことばかりして、王様にお約束申したこともやらなけりや、お見舞にすら上《あが》らないぢ
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