ました。」
母と子の鶉は、それから粟《あは》の穂や、虫などの拾つたのを喰べましたが、これまでにそれ程おいしく喰べたことはないと思ひました。
さて翌日から、又前のとほり母の鶉は近いところを、子の鶉は遠いところを、いろ/\餌《ゑ》をあさつて歩きました。といふのは、もう冬が近いのに、王様につかまつたりなんかして、そのしたくが、まださつぱり出来てゐなかつたのでした。で、もう母も子も毎日/\、朝から晩まで真黒《まつくろ》になつて働いてをりました。それだものですから、つい忘れるともなく王様へのお約束も忘れてをりました。
すると或日《あるひ》、藪《やぶ》の中で、お喋《しやべ》りの、みそさゞいが子鶉を呼びかけました。
「おいうづ[#「うづ」に傍点]公。お前は嘘《うそ》つきだな。」
子鶉は、あんまりだしぬけですから少しも様子が分りません。ですから丸い眼《め》をいよ/\丸くし、尖《とが》つた嘴《くちばし》をいよ/\尖《と》んがらかして呶鳴《どな》り返しました。
「なんだと、このおしやべりもの奴《め》。俺《おれ》を嘘つきだなんて、一たい貴様、何だつてそんな悪口をいふんだ? そんなことをいふわけを言へ
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