の定、母鶉は可愛《かはい》い自分の独り子の行衛《ゆくゑ》が知れなくなつたので大変心配して、もう物も喰《た》べられないで、ねてをりました。併《しか》し子鶉の顔を一目見ると、すぐに飛び起きてきました。子鶉も嬉し泣きに、
「チックヮラ/\。」と吃《ども》り鳴きに鳴きながら、王様のところへ、つかまつていつたことや、りつぱな籠《かご》に入れられ、おいしいものを食べさせられたけれど、おつ母さんのことを考へると、とても心配で/\たまらないから、喰《た》べも飲みもしないで、頭を垂れてゐたら王様が、なぜさうしてゐるのかとお尋ねになつたから、そのことを御返事申し上げると、とう/\放して下さつたことなどを詳しく話しました。
「それはまあ、よかつた。それにしても王様は本当にお情け深いお方だ。お前はそんな王様のしろしめしていらつしやる国に生れたことを有難く思つて、何か王様の御用をつとめなけりやなりませんよ。」と母の鶉はよく/\さとしました。
「それはもう、やるどころではありません。私《わたし》はこれから暇を見ては二三日おきに王様の御殿へ行つて一生懸命で、美しい歌を謡《うた》つて、お聞きに入れますと、お約束いたし
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