どもその声がいかにも力がなくて、例の疱瘡《はうさう》の神も遁《に》げ出すほどの勢がありません。王様を始め皆《みんな》は、鶉が来たので大変およろこびになりましたが、その声が、いかにも悲しさうなので、不審に思ひました。
「これ鶉。」と、王様はお声をおかけになりました。
「お前が来ないので、もしや鳥さしにでもさゝれたのではないかと、大変心配してをつたが、無事な姿を見てうれしく思ふぞ。併《しか》しお前の歌は今日は非常に悲しいが、一たいどうしたことか? もし心配でもあるなら、私《わたし》に打ち開けて話してくれ、王の力で出来ることなら、たとへ国の半分をつかふことでもお前のためにしてやるから。」
 子の鶉はしばらく考へてをりましたが、
「実は私ども母子《おやこ》は、よんどころないことから、もはやこの国に住《すま》つてをられなくなりましたのでございます。」と申しました。
「それは又どういふわけか。私《わたし》の国にをるのがお前はいやになつたのか?」
「いゝえ/\、いつまでも/\をりまして、王様のお耳に私の歌をお聞《きき》に入れることは私の願つても及ばぬ幸福でございますけれど、今をりますところには悪い狐
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