てゐた熊捕り競争を、ふたゝび始めることに、二人は相談をきめました。
「おい、チャラピタ」と、キクッタは言ひました。「これから一人々々別々に行かず、一緒に往《ゆ》かうぢやあないか」
「さうだね」と、チャラピタが答へました。「二人一しよなら、あぶないめにあふことはないな。それでも、さうすると競争は出来なくなるよ」
「うーん、出来るよ。たとへば、一しよに鉄砲や弓をうつて、両方とも中《あた》つたとしても、その中りどころが急所の方が勝ちときめりやいゝぢやあないか」
「さうだね。それもよからう。」
 そこで、二人は仲好しの友達として、お互に目の前で手柄をきそふことになりました。ところが、この結構な相談が、妙な結果になつてしまひました。
 或日《あるひ》、二人は有珠岳《うすだけ》の麓《ふもと》を廻《まは》つて、洞爺湖《とうやこ》のそばまで往つたとき、一疋の熊を見付けました。
「さきに見付けた人がさきにうつことにしようぢやないか」と、キクッタが言ひました。この熊をさきに見付けたのは、自分だつたからです。
「いゝだらう。君、やり給《たま》へ!」
 おとなしいチャラピタはすぐ承知しました。
 で、キクッタ
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