は新らしい銃を取り上げました。これは前の銃を折つてからキクッタの親父《おやぢ》が熊の皮十枚を出して和人《シヤモ》から買ひ取つたもので、最新式の軍用銃だといふことでしたから、キクッタは、今度こそは、たゞ一発でうちとめてみせるぞと思つたのでした。
 熊は可なり大きなもので、人の姿を見ると、れいによつて、後ろ脚で立ち上がつて、ウオッと吼《ほ》えました。
 キクッタはこゝぞと、その心臓をめがけてドンと一発放つと、みごとに命中しました。けれども、不思議にも熊はたふれずに、たゞ少し後ろへよろめいたゞけで、すばらしい、大きな唸《うな》り声を出して、ふたゝびキクッタにとびかゝらうとしましたが、そのとき、チャラピタの銃が鳴りひゞいて、熊はそこへゴロリところがつて息絶えてしまひました。
「なんだ、君はよけいなことをして僕《ぼく》の手柄を横取りするつもりだな」
 キクッタは額に青筋立てゝ怒りました。
「いや、そんなことはない。君の弾丸《たま》で熊が死なゝかつたので、僕《ぼく》は君を助けて、一発打つたのだ」
「ちがふ、僕の弾丸は、たしかに心臓に命中した。だから、熊はよろめいて仆《たふ》れるところだつたではない
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