か、君の弾丸なんか碌《ろく》なところに中つてゐやしない」
そこで二人は、只《ただ》そんな水掛論をしてゐたんでは、果てしがつかないから熊の死骸《しがい》を検《あらた》めてみようといふことになりました。
二発の弾丸《たま》が熊の左の胸に打ち込んでゐました。そして二つとも、僅《わづ》か三四センチをへだてゝ、同じところに命中してゐました。一発は上、一発は下でした。
しかし、これだけでは、どれが誰《だ》れの弾丸で、どれが熊の生命《いのち》をとつたのか分りませんから、二人は小刀《マキリ》を出して、その局所《ところ》を切り開いてみました。すると、上の方の弾丸は心臓のそばをかすつてゐますが、下の方の弾丸は見事に心臓に中つてゐました。
「これ見給へ。これが僕の弾丸だ。このとほり心臓に中つてゐる。君のなんか、中りつこはありやしない」
キクッタは威張つていひました。チャラピタはその出て来た弾丸を手にとつて、見くらべてゐました。二つとも鉛のでしたから、形が、ひどくいびつになつてゐました。でも、上の方の弾丸は明かに長めで、下の方のは丸い形でした。
「可笑《をか》しいね。君の鉄砲弾はドングリの実の形をして
前へ
次へ
全18ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング