、たあいもなく参つてしまひました。
 これは熊が人をおそふときの癖をよくのみこんで、アイヌが発明した滑稽《こつけい》なやうで、大胆不敵な狩猟法です。チャラピタはそれをやつてみようとして手槍を持つて出たのでしたが、あんまり不意に熊にとびつかれたので、それが出来ず、組打ちをしてゐるうち、ふりとばされ、しばらく足が立たなかつたので、キクッタにその功をゆづることになつたのです。


    四

 熊捕《くまと》りの競争はこれでまづ勝負なしでした。といふのは、最初に熊を見付けたのはキクッタでも、それを打ちとめたのはチャラピタでしたから、まづキクッタが負けでした。すると、二度目にはその反対で、チャラピタが見付けて、キクッタが打ち取つたから、これはキクッタが有利でした。で、あいこです。その上、熊は二|疋《ひき》とも三メートルばかりの身の長《たけ》で、重さが百五十キロ以上でしたから、これも優劣なしでした。
 チャラピタは組打ちしたゝめ、ところ/″\負傷してゐましたから、しばらくは家《うち》にねてゐました。キクッタは毎日のやうに見舞つて、親切にいたはつてやりましたが、疵《きず》がなほると、一たん中止し
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