がに弓の名手です。熊が姿勢をあらためて、チャラピタに向つてとび付かうとした瞬間、早くも狙ひをつけて、ピユッと毒矢を放ちました。中りました。が足のさきでしたからさすがに猛烈なブシ毒も、さう急にはきゝめがありません。
大熊は横合ひから、不意に矢を射込まれたので、チャラピタをおいてこつちへ向つて、例の後ろ脚で立ち上がつて、攻撃して来ようとしました。
もう二発目の矢は間に合ひません。そのときキクッタの目についたのはそこにチャラピタが落した、長さ二メートルばかりの手槍《てやり》でした。キクッタは電光《いなづま》のやうにそれを拾ひ上げると、二三歩前へ進み出で、穂尖《ほさき》を大熊の胸につきつけ、石突きを地面に当てがひ、柄をしつかり握つたまゝ、そこへうづくまりました。
勢ひこんだ大熊は、槍が自分の心臓に当てがはれてゐることには気がつかず、只、そこに恐れたやうに、うづくまつてゐるキクッタを、おし潰《つぶ》し、掴《つか》み殺してやらうと思つて、まるで大木でも仆《たふ》れるやうに、のしかゝつて来ました。そこで、丁度、こちらの注文どほり、熊先生、自分の身体《からだ》の重さで、自分の胸をぶす/\と刺して
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