ピタの方でも、これ以上は、どうにも仕方がありません。腰の小刀《マキリ》をとることが出来さへすれば、熊の心臓を一刺しに突き刺してしまふのですが、さうするために、うつかり片手を放さうものなら、振り落される恐れがあるので、仕方なしに、只《ただ》しつかりと抱付いてゐるのでした。
 キクッタはそれを見て、日頃《ひごろ》の念《おも》ひがかなつたと、大悦《おほよろこ》びでした。
「おい、チャラピタ、しつかりしろツ! キクッタが助けに来たぞ!」と、大きな声でどなりながら、毒矢を弓につがへて、大熊を狙《ねら》ひました。キクッタは弓にかけても、たしかな腕前をもつてゐましたけれど、大熊は一秒の休みもなく、とびまはり、跳ねまはりしてゐるうへ、その胸にはチャラピタが抱きついてゐるのですから、射そんじると大へんなことになります。
 で、只、ぢつと狙ひをつけ、すきをうかゞつてゐましたが、容易にそんなすきが見付かりません。そのうち、大熊が、ウオッと一きわ強く吼えて、ピョンとはね上がつた拍子に手の力がゆるんだかして、チャラピタはどしんとそこへ振り落されました。
「あッ!」
 キクッタは思はず驚きの声をあげましたが、さす
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