よわつてゐるらしいので、チャラピタは外へ出て、止《とど》めを刺してやらうと思ひ、銃にたま[#「たま」に傍点]をこめると、そのあとをおつて、穴の口まではひ出しました。
丁度、そのときでした。穴の外で、ドーンと銃声がひゞき、つゞいて熊がすさまじく吼える声が聞えたので、急いで、穴を出てみると、手負ひの熊は死物ぐるひになつて、今一人の人をめがけて、とびつく瞬間でしたから、チャラピタは碌《ろく》に狙ひをつけるひまもなく、ドーンと一発はなすと、うまく熊の背骨に中《あた》りましたから、ひとつたまりもなく、熊はその場に仆《たふ》れました。
「やア、チャラピタぢやないか、君は?」
そのとき、向ふの人が声をかけて、頭布《づきん》をとると、それはキクッタであることが分りました。
キクッタは偶然、チャラピタがはいつてゐる穴の口へ来て、その模様をしらべてゐるところに、突然銃声が聞えて、大熊がとびだしたので、一発打つたのですが、すつかり慌《あわ》ててゐたので、中らず、今度はもう身をかはす間もなく、危いところを、またもやチャラピタに救はれたのでした。
「あゝ、チャラピタ、君だつたか、穴打ちをやつてたのは、えら
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