耳がつぶれるやうな、ひどい音がしましたが、それと同時に傷をうけた熊の猛烈にうなる声がしました。チャラピタはぴつたり地面に顔を押し付けて、平ぺつたくなつてゐると、熊は唸《うな》りながら、非常な勢ひで、チャラピタの身体《からだ》を踏み越えて、穴の外へ走つて出ました。そして雪の上をウオー/\ワア/\と吼《ほ》えたり唸つたりして、狂ひまはつてゐます。つまり自分を傷つけた敵が外にゐると思つて、そいつを掴殺《つかみころ》してやらうと怒り猛《たけ》つてゐるのでした。
 けれどもチャラピタは穴の中に隠《か》くれたまま、その姿を出さないので、熊は張合ひがぬけて、すご/\穴の中に戻《もど》り、出て往つたときと同じにチャラピタの背を踏通つて、奥に往《ゆ》き、しきりと傷をなめてゐる様子でした、チャラピタはそれを見て、またもや一発|喰《く》はせました。熊は
「今度こそは、ゆるさないぞ」と、いふやうに、猛々しく吼えながら、またもや穴の外へ走つて出ましたが、やつぱり誰《だれ》もゐないので、すご/\と引返へして来ました。
 三度目に、熊はとびだすことは、飛び出したけれど、もう二発も弾丸《たま》を喰らつてゐるので、大ぶ
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