の数をとつた者には会所《くわいじよ》のお役人からりつぱな鉄砲を一|挺《てう》下さる。そして部落《コタン》ではその人をやがて酋長《しゆうちやう》の候補者にしよう」
さういふ懸賞の附《つ》いた課題が出てゐましたから、みんなが勇んだのですがじつさいそれに応ずる力のあるのは、キクッタとチャラピタとだけよりなかつたので、自然、二人の間の競争となつてしまひました。
「おれが勝つてみせるぞ!」
「なアに、優勝はおれのものだ」
二
そこで、キクッタは、ある日、お父さんのモコッチャルの銃を借りて、ベンベの森を熊《くま》をさがして、歩き廻《まは》つてゐました。
時は秋の半ばでした。赤く、紫に、黄《きいろ》に、樺《かば》色に、まるで花のやうにいろいろの紅葉が青い松や樅《もみ》と入りまじつた、その美しさといつたらありません。しかし、それよりもつと、このアイヌの少年の目をひきつけたのは、青いコクワと、濃紫《こむらさき》の山葡萄《やまぶどう》の実が、玉をつらねたやうに、ふさ/\と生《な》つて、おいで/\をしてゐることでした。
これはキクッタのやうなアイヌの少年には結構なおやつ[#「おやつ」に
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