てきました。たゞこの辺から暗いことも段々暗くなり、その上に暑くなつて来ました。弱虫で、そゝつかしやの次郎作は、独りで働いてゐるのが愈々《いよいよ》心細くなつて、一本の鼻毛を刈つては、合図に鼻の障子をたゝき、一つ垢をほぢつては、又合図をしました。けれども巨人の方では奥に二人が入るにつれて、こそばゆくなつて、嚏《くさみ》をしさうになりますのを怺《こら》へ/\致しますので、中の二人は時々その強い息に吹き仆《たふ》されました。それに気のついた仙蔵は、次郎作が合図をする度に、危いから、さう度々するんぢやないと、大声に叫んで注意しますけれども、聞えないと見え、矢張り合図をしてよこしますから、ハラ/\してゐます。そのうちどうしたはづみでしたか、次郎作が合図に鼻の障子を一つ叩きますと、その叩きやうが少しひどかつたとみえ、巨人はとう/\たまらず、ハツクシヨンと、上を向いて、大きな山でもとばされるやうな嚏《くさみ》をしました。
空に高く、風が木の葉を吹きあげたやうに、持つていかれた二人は、しばらくしてからどしんと地面におとされて、気絶しました。正気にかへつてみると、二人とも日本まで吹きとばされて、帰りつ
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