すから、直ぐにもつて来た小刀で、それに穴をあけて、中の赤い肉を切りとつて喰《た》べ始めました。すると余りにおいしいので、段々喰べていくうちに、とう/\体とも西瓜の中に入つてしまひました。そしてお腹が充分にみちたので、いゝ気持になつて、二人とも歌を唄《うた》つてをりました。
こちらはその大きな西瓜をうゑた人達《ひとたち》です。その人達は奈良《なら》の大仏を二つも合した程の巨人《おほびと》でありました。今はそんな大きな人間は世界にゐないことになつてゐますけれども、昔の人にはそんな巨人のゐたことが本当に思はれてをりました。
その巨人が、孫をつれて、畑を見に来ますと、自分の西瓜に穴があいて、そのなかゝら美しい声で歌が聞えました。
「おや変だぞ。」と、巨人は二人の入つてゐる西瓜に目をつけて申しました、「これは西瓜に虫がついた。困つたことをした。」
「ほんとに虫がついたね、おぢいさん、でもいゝ声の虫だから、取つて帰つて、飼ひませう。」
孫の巨人はさう言ひながら、指を穴に入れて、仙蔵と次郎作とを摘《つま》み出し、掌《てのひら》にのせました。驚いたのは二人です。たゞもう恐ろしさに小さく縮み上つ
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