されたる思想といふよりも寧ろ生み出された思想といふが適当だ。然らばその生み出された思想とは何かと云へば、それは愛だ。啻《ただ》に最近五年間といはず、有島君が最初から目指してきた、又総て武郎[#「武郎」に丸傍点]君の生命活動の主動《ライトモチフ》を為した愛が、此処にその全我の大肯定の下《もと》に、自らを確立したのである。武郎[#「武郎」に丸傍点]君の愛なるものゝ本質が何であるか、惜みなく奪ふ愛そのものである主我は他の多くの同様な主我と如何に対立共存し得られるか、武郎[#「武郎」に丸傍点]君の見るところ、説くところ、信ずるところに対してきつといろ/\な意見が発表せられるであらうし、又さういふことを論じ合ふのは、下らぬ揚足とりや、与太話よりも、ズツトましであるから、大なる期待を以て自分は観てゐるのである。
然し自分は此処に「惜みなく愛は奪ふ」の批評をする積りでもなければ、武郎[#「武郎」に丸傍点]君の人生観を彼是言ふものでもない。只之を所縁としてつく/″\と感じたことを述べてみたいのである。
他人のことを言ふ資格のない私は矢張り自分のことを言ふ。私は「惜みなく愛は奪ふ」を読んで、今更に自
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