をうたつた、二十九の歌を發見してセームンダル・エッダと名付けました。スヴェインスソンは、これは有名な學者セームンドが作つたものか、或は集めたものと思つてゐたらしいのです。だがそれは後になつて根據のないものと分りました。それが始まりで、後、各所から發見されたものを集め、現在では大小三十六篇の古歌が載つてをります。その中には脱漏があつたり、斷片のものがあつたりして、意味のハッキリしないものもありますが、これを大體二つに分けて、神々の歌と、英雄たちの歌としてあります。
 神々の歌には、天地開闢の神話が出てをりますが、それは希臘神話などとは違ひまして、北歐式の陰慘なものであります。最初に出てくるのはヴェルースパー 〔Vo:luspa〕 即ち巫女《みこ》の託宣といふ題で天地の創造をうたつてあります。試みに私が初めの方を少しばかり逐語的に譯してみませう。勿論、原文のずつと簡潔なもので力強く歌はれてをりますが、どんなことが、どんなふうにうたはれてゐるか、これでも少しはお分りにならうと存じます。

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一、聞召せとわれは願ふ(註、われとは巫女)
  大となく小となく
  聖なる族《
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