ソードにとんでゐますが、只今は省いて他の機會にゆづることに致します。スカルドの盛時は、ハラルド美髮王の時代で、王自らも優秀なスカルド Harald Harfagr でありました。
       九、散文時代
 スカルドに次いだサァガ Saga は散文の物語で、これはイスランドの美しい産物であります。軍談、講談のやうに歴史の事實を巧みな話術で話したのが今日に殘つてゐるわけであります。
 イスランドでは今日でも、宴會や、集會の席で、この講釋を餘興として聞く風習が昔のまゝに殘つてをります。
       十、傳統の精神
 これで甚だ概略ながら、古代のイスランド、ノルウェイ文學のお話を終りました。で、この古代文學が現代のスカンヂナヴィア文學とは如何なる關係をもつてゐるかと云へば、勿論、形式の上からは何んにもありません。けれどもその剛健不屈の古い傳統の精神、ローマンスの夢にあこがれる傳統の精神は、ちやんと殘つてゐます。イプセンの如き、ストリンドベーリの如き、いづれも自國の古い傳統に深い愛着をもち、その精華を發揮しましたし、ビョルンソンの如きは、スカルド蒐集の功によつてノーベル賞を貰つたほどであり
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