話の一
『エッダ』は廣い意味に於ける北歐の傳説を比較的、原形を保つて殘してゐる點で貴重な文學であります。歐洲の二大神話のその一つである北歐神話は、可なり立派にその中に殘されてゐます。ひとりスカンヂナヴィアの文學者のみでなく、この寶典から、詩想を得た者は他の國でも澤山あります。例へば、リヒアルト・ワーグネルの歌劇は『エッダ』を元にして造つたといふが如き一例であります。
七、特異の形式
『エッダ』の形式は獨特なもので、ごく短かい句毎の頭に重ねて行く、所謂頭韻をもつてゐます。たとへば、先程申しましたヴェルウスパーの初めの句は、
Hliodhs, bidh ek allar, helgar kindir,
meiri ok mini, 〔mo:gu〕 Heimdallar
となつてHの音や、Rの音、アラル、ヘルガール、ヘイムダラールと似た音がいくつも重なつてゐます。五、七、五七と幾つも句を重ね同じやうな言葉をくりかへして行くところは、萬葉の長歌と似たところがありませんか。
次に新らしい『エッダ』即ちスノルイの『エッダ』はさきに申しましたやうに、スカルド歌謠の作例といつた
前へ
次へ
全34ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング