やありませんね。もつとも、ジウラさんの姿は見やしないんですが、どこかにかくしてあるやうに、アルライが言つてゐましたから、さがしてみませう」
「でも、隠すところがないぢやないか。別な部屋に押しこめてあるんだらう」
「いや、一時押へて置くのにまつ暗な別な部屋へ、わざ/\面倒な思ひをして、入れに行く筈《はず》がありませんわ。きつと、この部屋に、何か秘密の戸口があるのよ。あたし呼んでみませう――ジウラさん、ジウラさん!」
 ニナール姫はしきりに呼んでみますけれど、何んの答へもありません。只《ただ》井戸の中で物を言つてゐるやうに、高い天井に反響するつきりでした。
 みんなは懐中電気やら、炬火《たいまつ》やら、蝋燭《らふそく》やらを壁だの天井だのにさしつけて、秘密の出入口でもありはしないかと、しきりにさがしましたけれど、一向それらしいものが見当りません。でみんな困つてゐました。
 と、そのとき、ニナール姫が、突然叫びました。
「分つたわ。あれよ! あすこよ!」
 姫の指は牀《ゆか》をさしてゐました。そこには二三寸も高く積つた埃《ほこり》の上に、大きな支那靴《しなぐつ》の跡がポタリ/\とついて、ラマ
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