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『宜しい[#「宜しい」に二重丸傍点]』
と一言答へたる醫學士の聲は此時少しく震を帶びてぞ予が耳には達したる[#「と一言答へたる醫學士の聲は此時少しく震を帶びてぞ予が耳には達したる」に傍点]。其顏色は如何にしけむ俄に少しく變りたり[#「其顏色は如何にしけむ俄に少しく變りたり」に白丸傍点]。
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是れ渠手術を乞はれて心動き初めたるの状
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『看護婦[#「看護婦」に二重丸傍点]|刀《メス》を[#「を」に二重丸傍点]』
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是れ夫人が藥を服するを拒み、斷乎として死を决したるを見て[#「斷乎として死を决したるを見て」に白丸傍点]、意を决して坐を起つ時の辭[#「意を决して坐を起つ時の辭」に白丸傍点]
凡て筆を有意無意の間に着く[#「凡て筆を有意無意の間に着く」に丸傍点]、是れ最も凡手の難しとする所[#「是れ最も凡手の難しとする所」に丸傍点]、伯爵夫人の心状に至つては、
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『夫人唯今お藥を差ます[#「差ます」に「〔ママ〕」の注記]、何《ど》うぞ其をお聞き遊ばして、いろはでも、數字でも、お算へ遊ばしま
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