たの角にはかけ合いに。万年働くかーめのっこ。きくはいのかめのこよりどったよりどった。とよぶ声いともかしましき。滝の川の秋の暮。人もようよう散れかかる紅葉《もみじ》のかげのかけ茶屋に。しばしやすらう二人の男。人品いやしからざるが。立ち上りながら。
男「篠原君すこし向うの方へブラブラしちゃアどうだ。君は尊大人のおなくなりなすってからは。めっきりどうも体がよわったようで。気が引き立たぬからいけない。そりゃア気のすまぬところもあろうが。どうもなったことならしかたがないサ。はま子さんも断然さとって。実に今は後悔のようだ。僕も昨日横浜に用があったからおたずね申したら。実に面目ないといって涙ぐんでの咄しも。実に真成のクリスチャンになりきってしまって。もとのような様子はすっかりなくなったヨ。
篠「あれは全く妹がわるい。当人も実に心得違いをしたと。しんに後悔をして。ああしておとなしくしていても。母に公然と逢いに来るわけにもゆかず。かんがえると実にふびんサ。
男「ソリャアもっともだけれど。君は養父母の義理を思っているからだが。君がそうふさいでいて。肺病にでもなってはなお不孝です。こんなことをいうとおかしい
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