まに。うでわ。ゆびわその他はま子の身につきたるものも。いつのまにや持ち出でたれば。ようやくはま子も心づきて様子をさぐるに、全くお貞とはもとより夫婦同様になしいたれど。はま子の恋慕を幸いに婚礼なし。その財産を押領《おうりょう》なすべきたくみなれば。ついにはあの方にのみ多くありて。物見遊山なども相のりをなして。これみよかしとわが家の前を通行なすなど。浜子はくやしさやるかたなきものから。もとはおのれがなせしわざと。さとればさすが里方篠原家への聞えもはばかり。執事はじめ付きそえきたりしはしたまでに。口留めをなしおきたれど。隠れたるより顕《あら》わるるはなく、とく勤にも聞えければ、なお委《くわ》しく調べたるに。家屋敷までもいつのまにや。抵当とやらんに質入れし。大金を借り出《いだ》したるなどのことまでしれたれども。正ははやくも官を辞し。とくにお貞を伴ないて。いずかたへかちくてんしたり。浜子はなまじいに交際ひろがりしより。かかる評判も随《したが》いてたかければ。今さらほぞをかむのみにて。日々に涙にくれいたり。

     第十一回

 ちとおかけなさい。一ぷくあがっていらっしゃい。とよぶ女の声。こな
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