。ここへ通しておくれ。
下「お逢い遊ばすの」とふしぎそうに出て行きしが。やがて案内をして連れきたれば。
浜「オヤどうも久しぶりで。
貞「まことにご無さたを申し上げました。しばらく用事かたがた見物に。大坂の方へまいっておりましたので。
浜「さようでござりましたとネ。いいご保養を遊ばしましたネー。
貞「あのまたやどが久しゅうおせわになっておりましておそれ入りました。
浜「オヤどなたが。
貞「あのやどがしばらくおせわになっておりまして。私しがるすでさびしいと申して。宅をしめきりてあがっておるそうでござります。まことにありがとうござります。
浜「私しは今の旦那様は存じませんが。どなたでござりますか。
貞「オホホホごじょう談ばかりおっしゃります。あのご存じの山中正で。
浜「何ですとえ。オホホホホホおかしい。
貞「なぜでござります。
浜「なぜだッてオホホホホホ。
お貞はわざとまじめになりて。
貞「なぜお笑いなさいます。
浜「なぜッて山中正は私しの何で。宅の主人ですものを。
お貞はわざとびっくりせし風にて。
貞「何でございます。アノお邸の……。それはほんとうでございますか。
浜「アラいやなネー。
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