ほんとうにおききなさるの。ツイこないだ婚礼をしまして……。
貞「何ですとえ。婚礼……。オヤオヤマアどうもあきれッちまいますネー。あたくしゃアちっともそんなことは夢にも……。
浜「オヤそうでしたか。その婚礼もネ。少し取込みがありまして。まだ公《おもてむき》にはいたしませんがネ。一夫一婦の大礼もあげ。私しの財産でこの家も買いましたし。召仕いの者も皆里から連れて参りましたのです。
お貞はこの話をきかぬふりにて独語《ひとりごと》のように。
貞「マアどうも実にあきれちまうよ。だからいわないこッちゃアない。篠原の嬢さんのそぶりがおかしいから。だまかされちアいけないといッたんだものを。
浜「なんですって。私しがいつ人を詐譌《さぎ》するようなことをいたしました。
貞「さぎだか烏《からす》だかしりませんが。人の男をたらしこんで。イケシャアシャアとしたお嬢さんだ。
はま子は呆《あき》れてお貞の顔を打ちまもれど。かなたはますます声高に。
貞「こんだ大坂から帰ってきたら。おもてむきせんの旦那のしってる人に。仲人《なこうど》をしてもらうつもりの咄しになっているのですよ。今さらお嬢さんにねとられましたからって
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