せしかば。人みなその処置のよろしきを得しをたたえしとなん。正は浜子をめとりてにわかに分限となりし心地はしたれど。入婿子《いりむこ》同じことにて。浜子は主人のごとくなれば。その才とその色とに不足あるにはあらねど。いままで食客にてありしを。かえりて気楽なりとおもうところもありぬべし。
女「ゆうべのおはなしで。すっぱりおまえさんの気もしれたから。今じゃアヤットおちついたがネ。婆アさんにあきがきて。かしをかえてしまったのかと。どんなにきをもんだかしりゃアしないヨ。
男「そうだろう。一体あすこの親指の口入れで官途にもありついたし。万端ひいきになるもんだから。お鬚の塵をはらっていて損のないとおもうとこから。せいいっぱい勤めていた内。あいつに英語を教えてやれということで……。マアなんだったのだが。これも御機嫌を損じてはと……。
女「イイヨたくさんだヨ。
男「そう咄しの腰をおるからいけない。それでとうとうこんだのやくそくも出来て。にわかに大尽になるようになるはなしだけれど。向《さき》はどうだかしらないが。
女「イイヨうるさい。
男「こっちには気にそまないだが。それ夕べも咄した通りのわけで。この一幕がか
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