りでございます。この間御洋行からお帰りになりましたと。宮崎さんから伺いましたが。ようまア。
篠原「十日ばかりあとにもどったが。きょうはあんまりあついから。その宮崎と涼みに出かける約束だから今にくるだろう。屋根を一|艘《そう》仕度《したく》してくんな」
女房「御酒《ごしゅ》はいりますか。お肴《さかな》は。
篠原「ストックを三本ばかりと。肴は三通りばかり見つくろって。いずれどこへか上るのだから。たんとはいらない」という折りから。宮崎は斎藤とともに入り来たり。
斎藤「や。先に来るつもりだったが」という間に。船も出来たれば一同それにのりうつりたり。
宮崎「五年というと久しいようだったが。こうなって見ればはやいものだ。洋行中にはいろいろの咄しもあろうし。君のことだから学術上には発明の説もあろうから。お尋ね申しゆっくりお聞き申したいと思っていたが。尊大人《そんたいじん》のとかくおすぐれなさらないので。御混雑の様子ゆえはばかりまして御無沙汰《ごぶさた》サ。
斎藤「僕も同様。しかし昨今はいかがでござります。
篠原「僕もご同感さ。君輩《きみはい》のごとき同窓の友を会して。ゆるゆるお咄しがしたいけれど。親
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