め》にくらべては。二ツばかり年かさにやあらん。鼻たかくして眉|秀《ひい》で。目は少しほそきかたなり。常におさんには健康を害すなどいいてとどめたまう。かの鉛の粉《こ》にても内々用いたまいしにやあらん。きわだちて色白く。頭《かしら》はえりあしよりいぼじり巻きに巻き上げて。テッペンにいちょうがえしのごとく束《つか》ねて。ヤケに切ったる前がみは。とぐろをまきて赤味をおびたり。白茶の西洋仕立ての洋服に。ビイツの多くさがりたるを着して。少しくるしそうにはみゆれど。腹部はちぎれそうにほそく。つとめて反身《そりみ》になる気味あり。下唇の出《い》でたるだけに。はたしておしゃべりなりとは。供待ちの馬丁《べっとう》の悪口。総じていわば。十人並みには過ぎたるかたなり。前の貴嬢は少しかんじたというようすにて。
乙「しの原さん。あなたのおあにい様も。モウお帰りが近づきましたねえ。
篠原「エエ夏ごろに帰るといってまいりましたけれど。わたくしゃアいやですワ。めんどくさくって。
乙「オヤなぜでしょう。あなたおたのしみでしょうにねえ。そうして学校のお下読みや何かしておいただき遊ばすにようござりましょう。
篠「ナニわたくし
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