「あなた今のお方御ぞんじ。
乙女「エーあの方は斎藤さんとおっしゃって。宅へもいらっしゃりました。
甲女「オヤさようでござりましたか。わたくしはこの間おけいこの時お名をはじめてしりましたよ。もとからよくおみかけ申す方でしたが。なんですか少し軽卒なお方ねえ。そうしてお笑い声などが馬鹿に大きゅうござりまして変な方ですねえ。
乙「デモあの方は学問もおあり遊ばして。なかなか磊落《らいらく》なよい方でござりますヨ。
と互いにかたらうこの二嬢《ふたり》は。数多《あまた》群集したる貴嬢中にて水ぎわのたちたる人物。まず細かに評せんには。一人は二八ばかりにして色白く目大きく。丹花の唇《くちびる》は厳恪《げんかく》にふさぎたれどもたけからず。ほおのあたりにおのずから愛敬ありて。人の愛をひく風情《ふぜい》。頭《かしら》にかざしたるそうびの花もはじぬべし。腹部はさのみほそからねども。洋服は着馴《きな》れたるとおぼし。されど少しこごみがちにてひかえめに見ゆるが。またひとしおの趣あり。桃色のこはくの洋服を着して。折々赤きふさの下りたる扇子にて。むねのあたりをあおいでいる。
側《かたわら》に坐したるは。前の嬢《むす
前へ
次へ
全69ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 花圃 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング