くなるの。
中働き「そうサ。それはわたしたちばかりではない。奥様でも随分西洋風にはお困りサ。いつかもどうもたべつけたものだから沢庵《たくあん》がたべたいとッて。上ったことがあったが。その時いた書生さんが悪口に。令夫人は殿様にかくして。沢庵とまおとこをなさったといったことがあったよ。アハアハ。それはいいがお嬢さんがお帰りでも。なかなかすぐにはおよらないで。今日はだれさんと一しょにおどったとか。まただれさんがこういったとか。いつでもしまいには。あの山中さんののろけをうけさせられるのがつらいの。
下女「ソレデモあの洋行していらっしゃる若様が。殿様の遠いお続きとやらで。お嬢様のお婿様だというではないか。それにあんなことをおっしゃってもいいのかネ。
中働き「そこが開化とやらで。おまえのような旧弊をいってはいけない。なにもあやしいわけがなければ。男と女の附合いはアア開けた風でなければいけないと。いつも殿様がおっしゃるよ。
という折から馬車のおとガラガラガラ。馬丁《べっとう》の声「お嬢様おかえり……。

     第四回

 九段坂より堀伝えに。ほおの木歯《きば》の足駄をガラガラ。と学校の帰りにやあ
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