ものか、まるで分らなくなってしまう、』とマイダスは独りで考えました。
 彼がほやほやのホットケイキの一つを取って、こわすかこわさないうちに、ひどく困ったことには、一瞬間前まで真白な小麦粉で出来ていたものが、玉蜀黍《とうもろこし》の粉でつくったように黄色がかって来ました。実のところ、もしそれが本当に出来たての玉蜀黍のお菓子だったら、ずっと有難かったのですが、最早その固さと急に重くなったこととで、これもまた金になってしまったことが、はっきり分り過ぎて、一向に有難くないのでした。殆どやけになって、彼は茹卵《ゆでたまご》を取って食べようとしましたが、これもすぐに川鱒やお菓子と同じように、金になってしまいました。その卵は実際、お話の本に出て来るあの有名な鵞鳥が、いつも産んでいたという金の卵の一つと間違えられそうでした。しかしその卵が金になってしまったのは、誰のせいでもなく、マイダス王自身がそうしてしまったのです。
『はてさて、これは困ったことじゃ!』と彼は考えながら、椅子にもたれて、小さなメアリゴウルドの方をひどくうらやましそうに見ました。彼女はもう大変おいしそうに、パン入りのミルクを食べている
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