!』
その見知らぬ人の微笑が、あまりあからさまになったので、それは、こんもりとした谿間へお日様がぱっと射《さ》し込んだように、部屋中を照らすかに見えました。そして金塊や金粉は、明るい光の中に散り敷いた、黄色い秋の木《こ》の葉のように見えたのでした。
『さわれば何でも金になる力ですって!』とその人は叫びました。『そんなすばらしいことを考えつくなんて、マイダスさん、あなたもたしかに相当なもんですね。しかし、それで間違いなくあなたは満足するでしょうか?』
『それで満足しないなんてことがあってたまるもんですか!』
『そんな力が出来て、あとで困ったなんてことは、絶対にないでしょうか?』
『一体、どうして困るなんてことになるでしょう?』とマイダスは問い返しました。『わしは、このことさえ聞き入れてもられえば、完全に幸福になれるんです。』
『では、あなたの望み通りになるように、』と、その見知らぬ人は答えて、別れのしるしに手を振りました。『明日、日の出る時になれば、あなたは何でも金にする力を授っているでしょう。』
と言ったと思うと、その見知らぬ人の姿がとても光り出したので、マイダスは思わず目を閉じま
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