彼の最大の望みを叶える力もあり、またそれを叶えてくれるつもりで来たのじゃないかというような虫の知らせを感じました。だから、今こそ、彼の頭に浮かんだ、出来そうな相談は勿論、ちょっと出来ないような相談でも、ただ口に出して頼みさえすれば、聞いてもらえるという、またとない機会なのです。そこで彼は考えに、考えに、考えて、黄金の山の上に、また黄金の山と、頭の中でいくつも積み重ねて見ましたが、なかなかこれでいいという大きさにはならないのでした。とうとう、すばらしい考えがマイダスの胸に浮かびました。それは本当に、彼の大好きな金にも負けない位すばらしいもののような気がしました。
彼は頭を上げて、この光り輝く見知らぬ人をまともに見ました。
『どうしました、マイダスさん、』とその人は言いました。『何か気に入った考えが浮かんだようですね。あなたの望みを言って下さい。』
『ただこういうことなんですが、』とマイダスは答えました。『こんなに骨を折って宝を集めて、力一杯やった結果が、こんなちっぽけなものかと思うと、わしはうんざりしてしまうのです。わしはさわった物が何でも金になってくれたら、どんなにいいかと思いますな
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