うことになっています。また、その時一しょに生れた今一人の兄弟の子が、「三つの金の林檎」の中に、六本足の怪物として、ハーキュリーズの手柄話にちょっと出て来るヂェリオンだったりするというようなわけで、「ワンダ・ブック」を読んでから、ギリシャ、ローマの神話にはいって行くならば、多くの旧知に出遇《であ》うような喜びを感じるでしょう。
最後に、それぞれの話の前後に添えられた「タングルウッドの玄関」その他の短い文章について、一言附加えておきたいと思います。それらは、前にもちょっと言った、作者の学生時代を思わせる青年ユースタス・ブライトが、子供達にそれぞれの話をして聞かせた、時と所と情景とを、まず描いて見せることによって、読者を聴き手の中へ誘って、話がすむとまた子供達に意見を述べさせたりして、読者にも考えさせるといったような、いずれも非常に暗示的な、面白いものだと思います。但し、話の本文とは少し行き方を異《こと》にしていて、寧《むし》ろ父兄の理解を助けるために添えられたものともいえるので、訳文の調子も少し変えておきました。
[#ここから3字下げ]
昭和十二年七月
[#ここで字下げ終わり]
[#地
前へ
次へ
全307ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング