なことになっていようとは露《つゆ》知らず、お互に姉妹達のうちの誰かが眼を取ったものと思い込んで、また新しく喧嘩を始めました。パーシウスは年取ったおばあさん達を、何もこれ以上無闇に困らせる気はなかったので、とうとう、わけを話してやった方がいいと考えました。
『おばあさん方《がた》、』と彼は言いました、『どうぞあなた方同志を怒らないで下さい。もし誰かが悪いとすれば、それは僕なんです。というのは、僕があなた方の輝かしい、立派な眼を持たせてもらっているのですから!』
『お前さんが! お前さんがあたし達の眼を持っているんだって! そしてお前さんは誰だい?』と、三人の白髪婆さんは、みんな一度に言いました。というのは、彼等はいう迄もなく、聞きなれない声を聞き、彼等の眼が何処の何者とも知れない人の手に渡ったことを知って、ひどくびっくりしたからでした。『おう! あたし達どうしましょう、姉妹達? あたし達どうしましょう? あたし達はみんな真暗《まっくら》だ! あたし達の眼を返して下さい! あたし達のたった一つの、大切な、掛替《かけがえ》のない眼を返して下さい! お前さんは自分の眼が二つもあるじゃないか! 
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