ちますかい? そんな馬が、うまく鋤《すき》を引張ることが出来ると、お前さんは思いますかい? 尤も、多少は蹄鉄の倹約にはなりましょう。その代りに、厩《うまや》の窓から飛び出されたり、――そう、ちょっと水車場まで乗って行こうと思っているのに、雲の上へ持って行かれてしまったりしたら、どんな気がしますかな? いや、いや! わしはペガッサスなんて信じませんよ。そんな鳥のお化《ばけ》みたいな、おかしな馬なんてありゃしませんよ!』
『僕はそうではないと考えるわけがあるんです、』とビレラフォンは静かに言いました。
 それから彼は、杖によりかかって、首を前に突き出して、一心に二人の話に耳を傾けていた白髪《しらが》のじいさんの方に向きました。そのじいさんが、片手を耳に当てていたのは、二十年このかた、耳がだんだん遠くなって来ていたからでした。
『そして、おじいさん、あなたの御意見は?』と彼は尋ねました。『あなたの若い時分には、きっとその翼の生えた馬を度々ごらんになったにちがいないと思うんですが!』
『ああ、若い旅の人、わしは覚えが悪うなってな!』とそのおじいさんは言いました。『もしもわしの記憶に間違いがなけ
前へ 次へ
全307ページ中262ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング