利用することは、いさぎよしとしなかった。
『自分の頭で話を作り出す力はいうまでもないこと、学問も僕ほどある人が、一年中を通じて、一日でも、君達子供のために、新しい話が出来ないようじゃ情《なさけ》ない、』と彼は言った。『だから今日は一つ、われわれの大きなお祖母《ばあ》さんともいうべきこの地球が、まだ上張《うわっぱり》を着て、よだれかけをかけていたような時代に、よろこんで聞いたような、大昔のお話をして上げよう。そんなお話なら百ほどもあるんだが、それがとっくの昔にどうして少年少女達のための絵本にならなかったか、僕には不思議なくらいだ。それどころか、そんなお話を、白いお髯《ひげ》を生やした、えらいおじさん達が、ギリシャ語の黴臭《かびくさ》い本の中で研究して、それが何時《いつ》、どうして、何のために出来たかなんて、頭をひねっているだけなんだからね。』
『まあいいよ、まあいいよ、ユースタスにいさん!』と子供達はみんな一しょに叫んだ。『話の説明はもういいから、始めて下さい。』
『じゃ、一人残らず坐って、』とユースタス・ブライトは言った。『そしてみんな二十日鼠のように静かにしてらっしゃい。たとえそれが
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