ね》が生えているのかと思われるほど、身軽で活発だった。それに、小川を渉《わた》ったり、草原を歩いたりすることは、何よりも好きなので、今日の遠足にも、ちゃんと牛の皮の深靴を履《は》いて来ていた。彼はリンネルの寛衣《ブラウス》を着て、羅紗《ラシャ》の帽子をかぶり、緑色の眼鏡をかけていたが、この色眼鏡は、おそらく眼のためというよりも、それがために何だかえらそうに見えるという伊達《だて》からかけていたのであろう。しかし、いずれにしても、彼はそれを別にかけなくともよかったのだ。何故なら、小さないたずらっ児《こ》のハックルベリが、玄関の段に腰かけている彼のうしろへそっと廻って、彼の鼻から眼鏡を手早くはずして、自分でかけていて、彼が取りもどすのを忘れているうちに、草の中へ落してしまったのが、翌年の春までそのままうっちゃってあったようなわけなんだから。
 さて、ここで是非言っておきたいのは、ユースタス・ブライトが、不思議な話の語手《かたりて》として、子供達の間に大変な人気があって、彼等がもっともっとと、いつまでも際限なくせがんだりすると、たまにはいやな顔をして見せるけれども、彼が果してそうした不思議な
前へ 次へ
全307ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング