のところへ飛んで来て、「わざわい」に刺されて赤くなったところを、ちょっと指でおさえると、すぐにその痛みは消えてしまいました。それから、彼女がパンドーラの額《ひたい》に接吻すると、彼女の傷もまた、同じようになおってしまいました。
こうした親切をつくしてくれたあとで、その光を帯びた見知らぬ人は、愉快そうに子供達の頭の上を飛び廻って、大変やさしく彼等を見たので、彼等は二人とも、箱をあけたことはそう大して悪くもなかったという気がして来ました。というは、もしもあけていなかったら、このうれしい訪問者までが、あのお尻に螫《はり》を持った小悪魔達にまじって、箱の中に閉じ込められていなければならなかったでしょうから。
『美しい方、一体、あなたは誰なの?』とパンドーラは尋ねました。
『わたしを「希望《ホウプ》」と呼んでいただきましょう!』とその明るい人は答えました。『そしてわたしはこんな陽気な者ですから、人達に対して、あの大勢のいやな「わざわい」の埋合《うめあわ》せをつけるために箱の中に入れられたんです。どうせ「わざわい」は人達の間にまき散らされることになっていたんですからね。決して恐れることはありませんよ! 「わざわい」がいくらいたって、わたし達はかなり面白くやって行けますよ。』
『あなたの翼は、虹のような色をしてるわねえ!』とパンドーラは叫びました。『まあ、なんて美しいんでしょう!』
『ええ、虹みたいでしょう、』ホウプは言いました、『何故かといえば、わたし陽気なたちなんですけど、にこにこしているだけじゃなくて、少しは涙をこぼすこともあるんですから。』
『そしてあなたは、いつまでもいつまでも、あたし達のところにいて下さる?』とエピミーシウスは尋ねました。
『あなた方がわたしに用がある間はいつまでも、』とホウプは、気持のいい笑顔をして言いました、――『つまり、あなた方がこの世に生きているかぎりということになるでしょうね、――わたしは決してあなた方を見捨てて行かないことを約束しますよ。時により、季節によっては、時々わたしが全然逃げてしまったのかと思うようなことがあるかも知れません。しかし、多分あなたが思いもかけないような時に、ひょっこり、ひょこりと、わたしの翼の光があなた方の家の天井に見えて来るでしょう。本当ですよ、わたしの大好きな子達、そしてわたしはこれから先あなた方がいただくことになっている大変いい、美しいものを知っているんですよ!』
『おう、聞かして下さい、それが何だか聞かして下さい!』と彼等は叫びました。
『訊いてはいけません、』とホウプは、薔薇色の口に指をあてて言いました。『しかし、万一あなた方がこの世にいるうちにそんなことがなくても、気を落してはいけません。わたしの約束を信じて下さい、それは本当なんですから。』
『私達はあなたを信じます!』とエピミーシウスとパンドーラとは、二人一しょに叫びました。
そして彼等は本当にホウプを信じました。いや、彼等ばかりでなく、その後この世に生れ出た人は、誰でもその通りホウプを信じました。そして、実際のことをいうと――(たしかに彼女がそんなことをしたのは、とても悪かったには違いないにしても)――僕は馬鹿なパンドーラが箱の中をのぞいて見たということを喜ばずにはいられないのです。そりゃもう――たしかに――「わざわい」が今もなお世の中を飛び廻っていて、減《へ》るどころか、却って数もふえて、それが大変いやな小悪魔達で、お尻にとても毒のある螫《はり》を持っていることも知っています。僕は今までにも彼等に苦しめられたし、これからも年を取って行くにつれて、もっと苦しめられることは覚悟しています。しかしその代りに、この美しい、明るい、ホウプの可愛らしい姿があるじゃありませんか! われわれは一体「希望《ホウプ》」なしで、どうすることが出来ましょう? ホウプは世の中を高尚にしてくれます、ホウプは世の中を常に新しくしてくれます。たとえ世の中が、どんなに明るく見えた時でも、それがただ、もっと後にやって来る限りない幸福の影に過ぎないということを、ホウプは教えてくれます!
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タングルウッドの遊戯室
――話のあとで――
『プリムロウズ、』とユースタスは、彼女の耳をつねりながら訊いた、『どう、この小さなパンドーラって子は気に入ったかい? 彼女はまるで君そっくりだと思わない? しかし君なら、その箱をあけるのに、そんなにぐずぐずしてやしないだろうねえ。』
『もしあけていたら、あたしそのわるさのために、随分ひどい目にあっていたでしょう。だって、蓋をあけると、真先《まっさき》にひょいと飛び出して来るのは、「わざわい」の姿をしたユースタス・ブライトさんだったでしょうからねえ、』プリムロウズは、手きびしく
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