ものか、まるで分らなくなってしまう、』とマイダスは独りで考えました。
 彼がほやほやのホットケイキの一つを取って、こわすかこわさないうちに、ひどく困ったことには、一瞬間前まで真白な小麦粉で出来ていたものが、玉蜀黍《とうもろこし》の粉でつくったように黄色がかって来ました。実のところ、もしそれが本当に出来たての玉蜀黍のお菓子だったら、ずっと有難かったのですが、最早その固さと急に重くなったこととで、これもまた金になってしまったことが、はっきり分り過ぎて、一向に有難くないのでした。殆どやけになって、彼は茹卵《ゆでたまご》を取って食べようとしましたが、これもすぐに川鱒やお菓子と同じように、金になってしまいました。その卵は実際、お話の本に出て来るあの有名な鵞鳥が、いつも産んでいたという金の卵の一つと間違えられそうでした。しかしその卵が金になってしまったのは、誰のせいでもなく、マイダス王自身がそうしてしまったのです。
『はてさて、これは困ったことじゃ!』と彼は考えながら、椅子にもたれて、小さなメアリゴウルドの方をひどくうらやましそうに見ました。彼女はもう大変おいしそうに、パン入りのミルクを食べているのでした。『自分の前にはこんなに贅沢な朝飯がある。それでいて、何一つ食べられるものはないのだ!』
 今では相当厄介な気がして来た、何でも金にしてしまう力も、大急行で食べれば、避けられるかも知れないと思って、マイダス王は、今度は熱《あつ》い馬鈴薯をつかんで、口の中へ押込み、それを急いでのみ込もうとしました。しかし、触れたものをたちまち金にしてしまう力の速さにはかないませんでした。彼の口は、粉を吹いた馬鈴薯じゃない、こちこちの金の薯《いも》で一杯でした。それがまた彼の舌を焼いたので、彼は大声でうなって、食卓から跳び上って、痛さとびっくりとで、踊ったり、どたばたと足を踏み鳴らしたりして、部屋の中を飛び廻り始めました。
『お父さま、ねえお父さま!』と孝行者の小さなメアリゴウルドは叫びました、『一体どうなさったの? お口が熱《あつ》かったの?』
『ああ、可愛い姫よ、』マイダスは悲しそうにうなりながら言いました、『お前のお父さんはどうなってしまうか分らないよ!』
 本当に君達、生れてからこんななさけない話って聞いたことがありますか? 王様の前に供えることの出来る、文字通りこの上なしの金目《かねめ》
前へ 次へ
全154ページ中48ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング