れて、えらいポリデクティーズ王が着座していました。王様や顧問官や廷臣や人民は、みんな熱心にパーシウスの方を見つめていました。
『その首を見せろ! その首を見せろ!』と人々は叫びました。彼等の叫びには、もしもこれから出して見せる物が彼等を満足させる程のものでなかったら、パーシウスをずたずたに引裂きかねないような烈しさがありました。『蛇の髪をしたメヅサの首を見せろ!』
若いパーシウスは、悲しいような、気の毒なような気持になりました。
『おう、ポリデクティーズ王様、』と彼は叫びました、『そして大勢《おおぜい》の方々《かたがた》、私はあなた方にゴーゴンの首をお見せすることは、ひどく気がすすまないのです!』
『ああ、この悪党の卑怯者!』と、人々は前よりもはげしくわめき立てました。『あいつはわれわれを馬鹿にしてやがる! あいつはゴーゴンの首なんぞ持っていないんだ! もし持っているんなら、われわれにそれを見せろ! でないとお前の首をもらって、フットボールにしてしまうぞ!』
いけない顧問官達は、王様に耳打して、悪い智恵をつけました。廷臣達は一斉に、パーシウスが彼等の王様であり主君である陛下に対して不敬を敢てしたと呟きました。そして、えらいポリデクティーズ王自身は、手を振って、威厳のある、きびしい、太い声で、わが身の危険も知らずに、その首を出して見せよとパーシウスに命じました。
『わしにゴーゴンの首を見せよ。さもなければお前の首を打ち落すぞ!』
それを聞いて、パーシウスは溜息をつきました。
『今すぐに、』とポリデクティーズはまた言いました、『でなければ命がないぞ!』
『では、お目にかけましょう!』とパーシウスは、喇叭を吹き鳴らしたような声で叫びました。
そして彼がメヅサの首を、さっと差上げると瞬《まばた》きをする暇もなく、悪いポリデクティーズ王と、いけない顧問官達と、獰猛な全人民とは、単に王とその人民との群像でしかなくなっていました。彼等はみんな永久に、その瞬間の顔附と姿勢とのままで、固まってしまったのです! 恐るべきメヅサの首を一目見ただけで、彼等は白い大理石になってしまったのです! そこでパーシウスは、またメヅサの首を袋に入れて、もう悪いポリデクティーズ王をこわがる必要のなくなったことを知らせに、なつかしいお母さんの許《もと》へ急ぎました。
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