ルばかりも上って行きました。その辺まで昇って、あの怪物達の鳴声が下の方からかすかに聞えるようになった時、彼はポリデクティーズ王のところへメヅサの首を持って帰るために、セライファス島をさして一直線に飛びました。
パーシウスが帰る途中で、今にも一人の美しい少女を呑もうとしているおそろしい海の怪物を退治《たいじ》たとか、又ちょっとゴーゴンの首を見せただけで、とても大きな巨人を石の山にしてしまったとかいったような、幾つかの驚くべき出来事もあるが、時間がないから略しておきましょう。しかし巨人を石の山にした話などは眉唾ものだと思うなら、君達そのうちにアフリカへ行って見るといい。今でもその巨人の名で知られている山が、ちゃんとあるんだから。
とうとう、勇敢なパーシウスは島へ帰り着きました。そしてなつかしい母親に会えると思っていました。ところが、彼の留守の間に、悪いポリデクティーズ王が、ダネイに対して大変ひどくしましたので、彼女は逃げ出さずにはいられなくなって、或るお寺に隠れていました。そのお寺では、年取った、いいお坊さん達が、彼女にたいそう親切にしてくれました。これらの感心なお坊さん達と、それからダネイと小さなパーシウスとが箱に入れられて流されて来たのを見て最初に彼等二人をいたわってくれたあの漁師とだけが、この島では正しいことをしようと心がけている人達のようでした。そのほかの人達は、ポリデクティーズ王に限らず、みんな行《おこな》いが悪くてちょうどこれから起ろうとするような目に遇うのがあたりまえでした。
お母さんが家に見えないので、パーシウスはまっすぐに王宮へ行きました。そしてすぐに王様の前へ通されました。ポリデクティーズは彼に会うことをちっとも喜んでいませんでした。というのは、彼は意地悪い心の中で、ゴーゴン達が哀れなパーシウスをずたずたに引裂いて、彼の邪魔にならないように、呑んでしまってくれたものとばかり思っていたからでした。ところが、彼がけろり[#「けろり」に傍点]として帰って来たので、王様はそれに対して出来るだけいやな顔を見せないようにして、パーシウスがどんな風にして成功したかを尋ねました。
『お前は約束を果したかね?』と王様は訊きました。『お前は蛇の髪をしたメヅサの首を持って帰ったかね? でないと、お前、ひどい目に遇うぞよ。わしは、美しいヒポデイミヤ姫に対する婚礼の贈物
前へ
次へ
全154ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング