こうした喧嘩をして、お互の平和をみだしていたらしいのです。彼等はお互に誰が欠けても困るわけですし、それに離れられない仲間として生れて来たことは明らかなのですから、これは尚更困ったことでした。一般的に言って、姉妹《しまい》であれ兄弟であれ、年寄であれ若い人達であれ、例えば仲間に眼が一つしかないというような場合には、お互に辛抱するようにして、みんなで一度に覗こうなどと意地を張らないようにすることを、僕は世の人達に忠告しておきたいと思います。
一方その間に、クイックシルヴァとパーシウスとは、ニンフを見つけようとして、一生けんめいに道を急いでいました。彼等はおばあさん達から大変詳しく教わっていましたので、間もなくニンフ達を見つけました。会って見ると、ニンフ達はナイトメヤやシェイクヂョイントやスケヤクロウなどとは、大変違った人達だということが分りました。というのは、彼等はおばあさん連ではなく、若い、美しい女達で、姉妹仲間に眼が一つというようなこともなく、めいめいとてもぱっちりとした自分の眼を二つずつ有《も》っていて、大変やさしくパーシウスを見たからです。彼等はクイックシルヴァとは知合いのようでした。そしてクイックシルヴァがパーシウスの引受けた冒険の話をすると、彼等は自分達が預っている大事な品々をパーシウスに渡すについても、少しも面倒なことは言いませんでした。第一に彼等は、鹿皮で出来ていて、変った縫取りをした、小さな財布のような物を取り出して来て、パーシウスに必ずそれを大切にするように言いました。これが魔法の袋でした。次に、ニンフ達は、踵に一対の可愛い小さな翼《はね》のついた短靴みたいな、スリッパみたな、草鞋《サンダル》みたいな物を取り出しました。
『パーシウス、履《は》いてごらん、』とクイックシルヴァが言いました。『これから先の道中、君はいくらでも望み通り足が軽くなるだろう。』
そこでパーシウスは、他の方を彼の傍の地面においたまま、一方のスリッパを履きにかかりました。とこが、出抜《だしぬけ》に地面においた方のスリッパが、翼をひろげて、地上から舞上りました。そして、もしもクイックシルヴァが跳び上って、うまくそれを空中でつかまえなかったならば、恐らくどこかへ飛んで行ってしまったかも知れません。
『もっと気をつけたまえ、』彼はそれをパーシウスに返してやりながら言いました。『空高
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