スが前から下げていた剣の代りに、それを彼につけてやりました。
『君の目的に役立つ剣は、わたしの剣のほかにはないのだ、』と彼は言いました、『その刃《は》はこの上もなく切れ味がよくて、鉄でも真鍮でも、まるで細い細い小枝を切るように切れてしまう。さあ、これから出かけよう。お次は、三人の白髪《しらが》の婆さん捜しだ。その婆さん達が、水精《ニンフ》の居処《いどころ》をわれわれに教えてくれるんだからね。』
『三人の白髪婆さんですって!』とパーシウスは叫びました。彼は冒険の途中に、また新しい面倒が起ったとばかり思ったからです。『一体その三人の白髪婆さんって誰でしょう? 僕はそんな婆さん達のことは聞いたこともありませんが。』
『彼等は三人の大変奇妙なおばあさん達なんだ、』とクイックシルヴァは笑いながら言いました。『彼等は仲間でたった一つの目と、たった一つの歯としか持っていない。その上、星明りか、夕方の薄闇の中かで見つけなければならない。というのは、彼等はお日様やお月様が出ている時は、決して姿を見せないからだ。』
『しかし、』とパーシウスは言いました、『僕はどうしてそんな三人の白髪婆さんのことで暇をつぶさなければならないんでしょう? すぐ、あの恐ろしいゴーゴン達を捜しに行った方がよくはないでしょうか?』
『いや、いや、』と彼の友達は答えました。『君はゴーゴン達の居る所へ行く迄には、ほかにいろんなことをしなければならないんだ。さしあたり、これらのおばあさん達を捜すほかないのだ。そしてわれわれが彼等に出遇えば、もうゴーゴン達からあまり遠くない所へ来たと思って間違いないんだ。さあ、出かけようじゃないか!』
 パーシウスは、この時までに、彼の道連れのかしこさを大変頼みに思うようになっていましたので、もうその上文句は言わないで、すぐにでも冒険旅行に出かけていいと答えました。そこで彼等は出発しました。そして可《か》なり速い足どりで歩いて行きました。それが実際また、あまり速かったので、パーシウスは足早《あしばや》の友達クイックシルヴァについて行くのが、少し難儀《なんぎ》になって来ました。実をいうと、彼はクイックシルヴァが翼の生えた靴をはいていて、勿論そのおかげで、彼の足が不思議に早いのだというような、妙なことを考えたのです。それからまた、パーシウスが目の隅っこから、横目でクイックシルヴァを見ると、
前へ 次へ
全154ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三宅 幾三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング