が王様のためにそれを取って来て上げることを引受けはしたものの、石にされてしまうことを心配していることなどを話したのです。
『石になっちゃ可哀そうだ、』とクイックシルヴァは人の悪いほほ笑みをうかべて言いました、『尤も、君は大変立派な大理石の像になるだろうがね。そして、ぼろぼろになってしまうまでには、何百年もかかるだろう。しかし大抵誰でも、石像になって何百年も立っているよりは、数年間でもいいから青年でいたいからね。』
『ええ、全くその方がいいですよ!』とパーシウスは、また目に涙をうかべながら叫びました。『それに、もしもかわいい息子が石にされてしまったら、僕の大事なお母さんはどうするでしょう?』
『まあ、まあ、そんな縁起でもないことにはしたくないもんだ、』とクイックシルヴァは元気づけるような調子で答えました。『もし誰かが君を助けることが出来るとすれば、わたしを措《お》いてないのだ。今じゃ恐しいような気がするけれども、君がその冒険を無事に切り抜けるように、わたしの姉とわたしとが出来るだけ骨を折って上げよう。』
『あなたのお姉さんですって?』とパーシウスは訊《き》き返しました。
『そう、わたしの姉だよ、』と見知らぬ人は言いました。『本当に、彼女は大変聡明なんだ。それにわたし自身としても、大した智恵はないが、どんなことにぶっつかっても、途方に暮れるというようなことはまずないね。もし君が大胆に、そして細心になって、わたし達の言うことをきいてれば、まだ当分は石像になるなんて心配は御無用だ。しかし、君は先ず第一に、君の盾を、鏡のようにはっきりと顔が映るようになるまで、磨かなくてはならない。』
これはまた、冒険の手始めとしては随分変なものだなと、パーシウスは思いました。というのは、盾などというものは、顔が映って見えるほど光ったりしているよりも、ゴーゴンの真鍮の爪から彼を護《まも》るだけの丈夫さのある方が、ずっと大切だと彼は考えたからでした。しかし結局彼よりもクイックシルヴァの方に深い考えがあるのだろうと思ったので、彼はすぐ仕事に取りかかりました。そして大変精を出して、熱心に盾をすり磨きましたので、すぐそれは秋のお月様のように光って来ました。クイックシルヴァはそれを見てにっこりとして、よしよしといったように、うなずきました。それから、自分の短い、反《そり》のついた剣をはずして、パーシウ
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